入居を検討するにあたって、欠かせないのが施設の見学です。見学することによって、パンフレットでは分かりづらい施設の全体像や内容などが把握できます。
施設に入居することで始まる新しい生活が「安心」「安全」「快適」になるよう、以下の項目に注目して見学しましょう。
見学する時のポイント
- 1.自分にあった雰囲気か?
- 2.必要な設備は整っているか?
- 3.介護の内容は十分か?
- 4.施設に聞きたいこと、相談したいことは無いか?
それでは、これらの項目のどのようなポイントに絞った見学をすれば、後悔のない見学になっていくのかを項目ごとに説明していきます。
自分にあった雰囲気か?
施設への印象は、見学者を迎え入れる雰囲気や挨拶、利用者とのコミュニケーション、応対の丁寧さで大きく変わります。受け取り方は個人差になるため、「馴染めそう、馴染めそうにない」といったように感じたままに受け取って構いません。
必要な設備は整っているか?
ご入居検討にあたり、設備の確認は見学の必須項目となります。どのようなところに注目し見学すべきか、また注意点はあるのか?などをお伝えします。
設備を見る際のポイントはこのようなものが挙げられます。
安全性の観点
例えば机があったとします。この机の「高さ」や「角」をチェックしましょう。
机が高いということは、いすも高くなる傾向があります。高齢者にとって高い机は使いにくく、危険な机です。逆に低すぎても車椅子が机の下に入らず、使いづらい机となってしまいます。
また、入浴設備では床面がすべりにくいか?機械浴はどのようなタイプの機械を導入しているか確認しましょう。身体状況によって機械浴の機械に合わなくなる場合も考えられますので、この辺りも質問して理解していきましょう。
次に居室です。「トイレなどの水回りの有無」「方角」「収納スペース」「階数」「景観」が重視されやすいポイントですが、これに加えて「ベッドを配置する位置」「ナースコースの位置」を確認しましょう。
新規で建てられた施設や、18平米や20平米超の広い居室ですと配慮されているケースが多いですが、居室面積に余裕が無かったり、築年数が経っている施設ではベッドを置けるスペースとナースコールの位置が不便になっている場合があります。ナースコールの側にベッドが配置できるのが理想ですが、そうでない場合は配線が床を伝うことが想定されます。そうなると、配線に足が引っかかり転倒する恐れがあります。
一見安全そうな段差・配置も年を取るごとに危険になる恐れもありますので、見学時には注意深く見てみましょう。
使いやすさの観点
高齢者にとって「使いやすい設備」とはどのようなものでしょうか?個人個人の体格や機能にもよりますが、「使いやすい」=「丁度良い」と考えることができます。
何が丁度良いのか、それは「高さ」と「重さ」ではないでしょうか。先述したとおり、机は高すぎても低すぎても使いづらいものです。また、重さも軽すぎたり重すぎたりすると危険が伴ったり使いづらくなってしまいます。
一般的に高齢になるにつれ筋力が低下し、物を支えにしながら歩くことも珍しくありません。この支えが軽すぎると、支えが動いてしまい転倒する恐れがあります。また、重すぎる物は非常に使いにくく、使用をやめてしまう恐れがあります。
介護の内容は十分か?
有料老人ホーム・介護施設と一概に言っても、健常者向けだったり、認知症や重介護を得意とするなど、内容は様々です。
ここでは介護の特徴をより理解しやすくするための内容をお伝えします。
職員体制
利用者に対して介護職員が十分か検討しましょう。一般的に「3対1」や「2対1」という数字で示されますが、これは「利用者3名に対し常勤職員が1名勤務している」ことを示しています。従って「1対1」により近いほど手厚い体制と考えて問題ありません。
職員体制が手厚いと、ナースコールなどが迅速に対応してもらえたり、十分な介護が受けられたりと、快適に生活するための体制が整っている場合が多いです。
介護方法
施設によって介護方法は様々です。大まかには以下のような介護方法が取られます。
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1.ユニットケア
入居者を身体状況にあわせ10名前後のグループに分け、グループごとに担当の介護職員を配置する方法で、多くの施設で主流となっています。入居者の身体状況を細かに把握でき、ちょっとした状態の変化にも気付きやすいのがメリットです。
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2.フロアー分け介護
ユニットケアのグループ分けが人数ではなく施設の各階毎になった方法です。ユニットケアに比べグループ人数は多くなり、身体状況の区分も少し緩やかになる傾向がありますが、基本的にはユニットケアと同等の介護が提供されています。
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3.混在型介護
身体状況別に区分せず介護を提供していく方法です。ユニットケアやフロアー分け介護に比べ必要な職員数が少ないため、利用料金はリーズナブルになる傾向があります。この方法は家庭的で温かみのある雰囲気を重視している施設で多く見られます。介護職員が利用者全員を把握するため、施設内のコミュニケーションが取りやすいのが特徴です。
リハビリ体制
施設を利用する理由として、疾病やケガによる入院で身体状況が低下してしまったことなどが挙げられます。病院で行ってきたリハビリを施設でも継続して行っていきたいという要望は多く、理学療法士や作業療法士、柔術整体師が常駐したり、機材を導入しリハビリに取り組む施設も増えてきました。
最近では週に2〜3回、専門担当者と取り組む「個別リハビリ」を行う施設もあります。しかし、施設でのリハビリの体制が整っていく一方で、病院に比べどうしても出来ることが限られる場合もあるため注意して下さい。
医療連携
施設は地域の医療機関と協力関係を結んでおり、入居検討の際には協力医療機関がどのような治療、サポートを提供してくれるかが大切になります。
往診の対応や、緊急時の対応、入院が必要となった場合に病院を紹介してもらえるか、などが重要になります。
一般的に往診に入ってくださる医療機関は内科を基本としていることが多いです。専門的な診療科目が必要な場合は注意が必要です。
施設に聞きたいこと、相談したいことは無いか?
施設を見ただけではその施設を理解することは難しいです。安心して入居できるよう、心配していることを質問、相談しましょう。
ここではどのようなポイントに注目して相談したら良いかお伝えします。
入居要件
料金以外にも、施設には様々な入居要件が存在します。例えば介護認定が必要であったり、感染症(MRSAやC型肝炎)があると利用できない施設など、様々です。いざ申し込みするときになって要件に満たないことが無いよう、施設の受け入れ要件を質問しておきましょう。
退去要件
多くの施設は「終身利用契約」となりますが、実際のところは介護の限界として施設で定めた退去要件があるところがほとんどです。
- 1. 昼夜問わず日常的に医療サポートが必要となる場合
- 2. 日常的に暴力・暴言が出てしまう場合
- 3. 費用の支払いができなくなった場合
「終身入居」に惑わされず、退去要件やどこまで介護してくれるのかを明確にしておきましょう。
保証人の責任範囲を知る
入居の際には原則的に連帯保証人が必要となります。連帯保証人には大きく3点
- 1.緊急連絡先
- 2. 利用料金支払い
- 3. 身元引受人
利用者の体調が急変した場合や、レクリエーションが有償となる場合の意思決定先としてご連絡します。
利用料金が未納となった場合の保証をしていただきます。また返還金が残った状態で退去された場合に返金先といたします。
いかなる理由を問わず、退去する際の身元引き受けをしていただきます。
が責務となります。
施設によって保証人になれる条件が異なります。責任を伴うため、質問し、理解しておきましょう。
施設の一番の「ウリ」を知る
どの施設でも「ウリ」を明確にした運営をしています。それを知ることで施設生活を想像したり安心することがしやすくなります。
周囲の噂話だけではなく、入居者ご自身で見聞きし、雰囲気を感じ取ることが重要です。施設の特徴を知ることは、入居者ご自身や周辺家族のニーズと合致しているか、という判断材料にもなります。
入居時の費用や利用料の他に必要な経費を知る
一般的な月額費用は「家賃」「食品」「管理費」からなりますが、施設によって表記が異なったり、細分化されているため、パンフレット等で確認する必要が有ります。
また、これら費用以外にも毎月どの程度の雑費が必要か把握することは非常に重要です。特に「公共料金」「入浴・洗濯の費用」が月額費用に含まれているか、医療費や日用消耗品代はいくらぐらい必要かを相談しましょう。